デザイナーとは、事業者様の気持ちをユーザーに伝える“翻訳者”
「デザイナー」というと、一般的なイメージとしては、「センスよく、かっこいいものをつくってくれるプロ」という風に認識されているようです。特別なセンスがある人なんだろう、絵がうまいんだろう、とか、ビジュアルだけの「見かけ」のポイントだけが仕事なんだろうと思われることが一般的です。
しかし、パッケージデザインの分野では、いわゆるかっこいいセンスのいいデザインが、必ずしも売れるとは限らないのです。
ユーザーの求めているものは、もっと複雑で、本能的なものです。
私は、パッケージデザイナーの役割は、飾ることではなく、事業者の方の商品に対するこだわりを、正しく消費者に伝える「翻訳者」だと思っています。
多くの事業者さんは、自分の商品の魅力を伝えられていません。というより、魅力に気づいていない場合もあります。その魅力を消費者が分かりやすい様に、デザインにアウトプットすること。それが私たちの仕事です。
例えば、ある揚げ菓子を作っているメーカーさんがいました。
かたちが不揃いで見かけはパッとしないんですが、味は最高級のクッキーに引けを取らない美味しさ。なぜそんなにおいしいか、工場見学してわかったのは、素材の良さは当然ながら食感を大切にするため、生地を限界まで柔らかく練っていたからなのです。
しかし、生産性もさげてまで味にこだわっているのに、そのこだわりを当たり前だと思っていて、説明することもなく安い値段で売っていたのです。
日本にはものづくりに真摯に向き合うメーカーさんがたくさんいらっしゃいます。自らの仕事への誇りがそうさせるのでしょう。
こういう方々がものづくりをしてくれる国に生まれて本当に幸せだと感じます。
弊社では、時には工場にお伺いして、クライアントさんの状況を細かくヒアリングします。まず、お客様をよく知り、隠れた魅力まで探し出すところからはじめます。
また、一方で、こだわりポイントを絞りきれない事業者さんもいらっしゃいます。
アピールしたいポイントが多すぎて、何が言いたいかまとまりがつかなくなってしまっているのです。あれも言いたい、これも言いたい、もっと強くアピールしてほしい。と言われることもよくあります。
しかし、あまり要素が多すぎると、逆に安っぽくなり、消費者に伝わりません。
デザインは限られた狭い面積で伝えなければなりませんから、どんどん積み上げていくたし算だけでは、差別化できません。
敢えて訴求ポイントを減らして、空白を見せる引き算が効果的になります。
どんなコンセプトに絞り込めば消費者に届くのか、市場のニーズを分析して整理することも私たちの仕事です。
多くの事業者さんは、自分の商品の魅力を伝えられていません。というより、魅力に気づいていない場合もあります。その魅力を消費者が分かりやすい様に、“翻訳”してデザインにアウトプットすること。それが私たちの仕事だと考えています。